緑内障に対する、選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT) 緑内障(りょくないしょう)で、目薬や内服薬で視野の悪化が止められない患者さんへの治療は、以前は手術しかありませんでした。が、緑内障の患者さんにとって朗報となる、画期的な新しい治療法ができました。それが選択的レーザー線維柱帯形成術(selective laser trabeculoplasty 略してSLT)です。 左は、西伊豆眼科クリニックで使っている、ELLEX社製 SLTです。今までの眼科機器からは考えられないぐらい垢抜けていてCOOLな外観が特徴です。性能も非常に良いです(台の仕様などは複数ありますので、メーカーさんのHPの物とは見た目が多少違いますが、中身は同じです)。 治療を受けた患者さんのカルテのビデオは https://youtu.be/bDR3kKkQYMw ご覧ください。 緑内障とは・・・視神経がいたんで視野が狭くなってくる病気です。いろいろな説がとなえられていますが、「眼圧がその人の神経が耐えられる値よりも高いために、視神経がいたむ」と考えられています。すなわち、眼圧が低い人でも、視神経がそれに耐えられないぐらい弱ければ神経がいたんでくるわけです。 SLTに興味のある患者さんからよくある質問です。 Q SLTはほんとうに効くのですか? SLTは効かないので受ける価値なしという説を唱えている眼科の先生がいます。 A 効く人には効きます。効かない人には効きません。 Q なぜそのように意見の食い違いがあるのですか? A 私は、実際に自分でやって検証しているから、間違いようがありません。効かないという説があまりにばかばかしいので、SLTは効かないと言っている先生は、自分でやったことないか、機械が悪いか、腕が悪いか、どれかに違いないとしか思えないです。強いて言えば、「もともと10代前半のような高くない眼圧の人にはあんまり効かない事が多い」です。それは「効かないので受ける価値なし」とはものすごい違いだと思います。 自分が嘘を言ってると思われないように、以下にSLTを受けた患者さんのカルテを示しておきます。私が正しいか、効かないと言っている先生が正しいか、あとはみなさんのご判断にお任せします。 Q 私にはSLTは効くでしょうか? A やってみないとわかりません。お薬、手術、なんでもやっぱりそうだと思います。 余談ですが、SLTに関係なく、 「絶対効くならやってください」 「絶対効くとは限りません」 「だったら受けません!」 と言って怒って帰る人もたまにいます。そういう人には、世界中どこの先生もまともに治療してくれないですし、見ているとけっきょく徐々に不幸な方向に行きます。「最善の治療をやってもらって、それでもだめなら仕方がない」と思えた人が幸せになれる人です。 ●患者さんのカルテです。個人情報に配慮して、個人を特定できる可能性のある部分は削除しています。 ↓Vd=右の視力、Vs=左の視力、NT=機械で測った眼圧。AT=医師が手で測った眼圧。ともに右/左の順で記載。手で測ると測定医師によってばらつきがあるため、私は機械での値を重視しています。医師が手で測る方が正確と言う先生もいますが、古く感じます。うちが使っているような最新の機械はそんな甘くはないです。手で測るよりずっとすごいです。 総合病院で、重度のぶどう膜炎、白内障、緑内障でfollowされていた。どんどん悪化する事に不安を覚え、平成○○年1月30日当院初診。両眼とも末期の緑内障。両眼ともひどい白内障。 右はすでに失明寸前。点眼継続以外に特に出来ることなしと判断した(眼圧が8。この時点ですでに視野は測定不能。目は末期になると、元気がなくなって眼圧が下がってきます。この状態で白内障とか緑内障の手術をすると、手術中に終了を迎えますので、点眼以外どうしようもない)。 左は視力0.04。3回測定の眼圧平均値38.7mmHg。初診時に点眼をよく吟味し、少し変更。奇跡的に10台に下がれば様子見、下がらなければ、いかなる手術にはもう耐えられないと判定し、SLTという方針で。 ↓2月1日、薬の工夫により左眼圧が下がっている。しかし、あいかわらず高いので、左のSLT施行。2月3日、左眼圧23.3。2月10日、左眼圧14。効果ばっちりだが、3月29日、左眼圧21.7。普通は様子見だが、この方の場合は待ったなしなので、 ↓即日SLT追加。その後、ずっと低い値を保っている。もしSLTがなければ、2月中ぐらいには両眼とも失明していただろう。 平成○○年5月以降、本人入院のために来院できなくなりました。 うちに来て、SLTを受けたおかげで、患者さんやの家族はたいへん助かったと思います。私も、すべての人にSLTが効きますとは申しません。しかし、このカルテを見て、SLTは効く人にはとても効くし、それが本人と家族を助けることもあるということをご理解いただければ幸いです。 mail: otaka@isao.com |